2013-02-24

【参加報告】「大学図書館は電子書籍をどう取り扱うか」

2月22日(金)に、兵庫県大学図書館協議会研修会「大学図書館は電子書籍をどう取り扱うか」に参加してきました。


○講演1「電子書籍と出版文化の未来―流通基盤構築と出版デジタル機構の役割」(専修大学・植村八潮氏)

以前からそのご活躍ぶりを存じ上げていた、植村さん。今回初めてお話を伺うことができました。

現在のお立場からお察しして、出版デジタル機構の現状や、「垂直統合」ビジネスへのご批判のようなお話が中心になるのかと思っていましたが・・・さにあらず。 電子書籍市場の規模だとか、「黒船」前後の経緯説明など、電子書籍入門といった感じのお話でした。


これはきっと、聴衆が図書館員であることに、ご配慮頂いたのでしょう。
本来的図書館員であれば、自分で学んでおくべき情報も多かったです(とは言え、私も知らない情報が多々ありましたが・・・)。
「目から鱗」といったお話ではなく、現状の理解に重点を置いたご講演だったと言えるでしょう。

一方で植村さんは、「解はない」としつつも、「電子図書館を考える7つのポイント」として私たちへの示唆をくださいました。こうしたヒントをどのように活かしていくのか・・・私たちの見識が問われる課題です。


質疑応答の際、「出版デジタル機構は(税金による運営ではなく、)ビジネスとして成立させる」と常々おっしゃっている点について、見通しを伺いました。
植村さんは、官民ファンドであって税金の投入ではないことを説明された上で、多くの出版社の支持を得ながら進めていく、と前向きなお考えを示されました。


このご回答からも感じたことですが、植村さんは情熱家タイプなのでしょう(以前から思ってはいたのですが、リアルにお目にかかって勝手に確信)。
本が好きだから、電子出版に夢を見ているから、これだけの行動に出られるのだと思いました。この日のお話も、理詰めで納得させられたのではなく、植村さんに共感したような気がします(少なくとも私は)。

こうした人が先頭に立って進めている電子書籍、もしかすると今度こそ本当の「元年」なのかもしれません。

ご講演後もご挨拶に伺ったところ、気さくにお話をしてくださいました(あの恥ずかしい「空手家図書館員」名刺を渡してしまいました〜)。
植村さん、貴重なお話をありがとうございました!


○講演2「電子学術書利用実験から考える-学生と教育の変化と図書館の役割」( 慶應義塾大学・入江 伸氏)

入江さんのお話を伺うのは、もう何度目でしょうか。いつも率直なトークで、先駆的な試みについて、いろいろとお話くださいます。
この日のお話も興味深いものでしたが、前にもこのブログで書いていますので、今日は簡単に。

入江さんはまず、電子リソースと紙媒体の図書について、利用状況を分析されました。
研究用(英語)電子ジャーナルはほぼ整備できた反面、学生用の日本語の教育用書籍が紙だけに留まっている点が課題であると示されました(利用の面だけでなく、管理コストの面からも)。

その上で電子学術書利用実験について紹介され、新刊電子書籍とパブリックドメインの間の部分を図書館がリードして実現したい、と語られました。また、図書館は教育改革の中で、教育に直結して電子図書館を目指さなければ生き残れない、と考えを示されました。

質疑応答の際に、「学内の教育改革に、どのように図書館がタッチしていくのか」という質問をしてみました(私が挙手したとき、「あ、また井上が来たぞ〜」という感じで、入江さんがニヤリとされていましたw)。
入江さんは、「教育改革の議論が行われるときに、声をかけられる信頼を作っておくことが基本だ」とご回答くださいました。なるほど、な回答ではあるのですが、それをすることは容易いことではなさそうです。

学生さんの声を拾いつつ、利用実験に取り組まれる入江さんのお姿は、いつもながらアツかったです!貴重なお話、ありがとうございました!


以上、かけ足ながら、兵庫県大学図書館協議会研修会のレポートでした。
貴重な機会をくださいました兵庫県大学図書館協議会事務局の皆さま、ありがとうございました。また、終了後にご一緒くださった皆さま、ありがとうございました。


●勉強会のご案内

私の在籍しています大阪市立大学大学院創造都市研究科にて、以下のワークショップを開催します。どなたでもご参加頂けますので、ぜひご参集ください。
他ではあまり広報していませんので、ぜひ↓をチェックください。

【日時】2013年3月1日(金) 18:30~20:00
【場所】大阪市大大学院創造都市研究科 梅田サテライト103教室(大阪駅前第2ビル6階)
【テーマ】「リベラル・アーツ教育と図書館」
【講師】畠山珠美氏(国際基督教大学図書館 図書館長代行)
【参加費】無料
【お申込み】どなたでも歓迎。karatekalibrarian@gmail.com または Twitterにて@karatelibrarianまたは@kctakeまで、2月中にお申し込みください。
【その他】終了後、有志懇親会もあります(実費負担)。

ご同僚・ご友人に周知してくださると、井上が喜びます!お誘い合わせの上、お申し込みください。



●れいこと

このところ、図書館ネタでちょっとずつ更新頻度が高くなってきた、このブログ。
れいこへの思いが途切れることはありませんが、できるだけ本来の図書館ネタへシフトしていこうと思っています。


ブログのタイトルやプロフィールなども、れいこの闘病中のままです。プライベートメールの署名や、Twitterのプロフィールなどもそうです。
判ってはいるのですが、変えられないまま今に至っています。れいこの部屋を片付けられないのと、一緒なのかもしれません。

少しずつ、気持ちの整理を付けていくしかないのかな・・・と思いつつ。


それでは、押忍!

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