2011-11-28

【参加報告】
国立大学図書館協会シンポジウム「電子書籍と大学図書館」

今日は、図書館ネタです。
れいこを応援くださっている皆さん、申し訳ありません。

・・・が、今日も写真くらいは。

鯛焼きを食べる、れいこ。


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さて、今日の本題。

●【参加報告】
国立大学図書館協会シンポジウム「電子書籍と大学図書館」

25日(金)に、標記のシンポジウムに出席してきました。
開催主旨などは、以下のとおりです。

  1. テーマ
    電子書籍と大学図書館

  2. 趣旨
    大学図書館では、従来、学術系の電子書籍、例えば、NetLibrary や大手欧米学術出版社が提供するものを導入してきたが、この数カ年に電子書籍は、一般向けに、アメリカを中心に急速に普及しつつあり、Amazon の電子書籍の売上はペーパーバックを超えたといわれている。

    国内においても、従来の携帯電話用書籍やコミックス電子版とは別に、これに追随する動きが起きており、また、国内の公共図書館でも先導的に導入を図る館も現れている。

    電子書籍は、企画、制作、出版、流通の各段階において、従来の紙媒体資料とは全く異なった特性を持っており、出版界、知識・情報の流通を革新するものである。これらの電子書籍は、出版・流通と密接な関係にある大学図書館にも極めて重大な影響を及ぼすものと考えられる。

    電子書籍の特性、動向、大学図書館に与える影響について、出版界、書店、図書館等の関係者からお話を伺いながら、大学図書館と本協会の今後の取り組みについて意見交換をする場として、国立大学図書館協会のシンポジウムを開催する。

  3. 主催
    国立大学図書館協会

  4. 会場及び開催日
    京都大学医学部 芝蘭会館
    平成23年11月25日(金)

  5. 参加資格
    大学図書館経営に携わる管理者及び中堅職員


このシンポジウムに関する公式サイトを探したのですが・・・もしかして、作っていないとか??仕方ないので、案内文書からほとんど丸々ペーストしておきました。

こうした場での議論などをあちこちで活用していくのであれば、ぜひとも公式サイトに開催主旨などを含めて公開し、開催後もパーマネントリンクで残して頂きたいところです。


○講演1 「電子書籍をめぐる出版界と図書館界の新局面」
湯浅 俊彦氏(立命館大学 文学部 准教授)

「出版界における電子書籍ビジネス」、「アップル、アマゾン、グーグルの戦略」、「電子書籍をめぐる図書館政策」、「出版業界と図書館の新局面」という章立てで、盛りだくさんの弾丸トークをお聞かせ頂きました。

まず背景として、出版販売金額や電子書籍売上高などの数字の推移を示された後、iPad、Google eブックス等について説明されました。
それらを受けて、例の「デジタル・ネットワーク社会における出版物の利活用の推進に関する懇談会」、「電子書籍の流通と利用の円滑化に関する検討会議」、NDLの大規模デジタル化、電子納本制度をめぐる議論、出版デジタル機構などについて、言及されました。


湯浅先生のお話は、わずか20分という時間の中で、先頭バッターとして話題提供や背景説明などにウェイトを置いていらしたようです。
湯浅先生は、この分野の第一人者ですし、もっと突っ込んだお話をお聞きしたいところではありましたが、今日は役割に徹していらっしゃいました。



○講演2 「Googleの電子書籍への取り組みが目指すもの-『Google eブックス』について-」
佐藤 陽一氏(グーグル株式会社 戦略事業開発本部
ストラテジック・パートナー・デベロップメント・マネージャー)

私がずっと、強い関心を持ち続けている、かのGoogle。ど真ん中ストライクで関心があり、しかもかねがねお話を伺いたかった、佐藤さんの講演でした。


佐藤さんはまず、あまりにも有名なGoogleのミッションについて、説明されました。
その上で、Googleのインフラは、クラウドコンピューティングサービスであることを力説されました。クラウド上にあるので、電子書籍もPCとスマートフォンなど、複数のデバイスで見ることができる、ということです。

Googleは、世界中にある本(約1億3千万冊との見立てとのこと)をすべてデジタル化して、全文検索できるようにしたい、とお考えとのことです。
Googleブックスは、パートナープログラム+ライブラリープロジェクトで行われています。スキャンされた図書は何と、1,500万冊、50億ページ、2兆単語。全世界40図書館と35,000社、478言語に至ります。

よく誤解されているそうですが、図書のスキャンは、機械を使わず人手でやっているそうです(例のスキャンマシンの話が、よく噂に流れていましたね)。
「機械でやって本を傷めたら、K大学のIさんに怒られる」、と佐藤さんは笑っておいででした。


ここで、Googleブックスの使用デモを行ってくださいました。
佐藤さんもおっしゃっていましたが、情報ソースとして本を意識していない人に、本の内容情報を検索結果を返すのが、Googleブックスの特長です。
この点には私も大いに同意するところで、本を頼っていない人を、本に結び付けるという点は、OPACやAmazonの持たないチカラですね。その点でこのサービスは、非常に高い価値を持っていると思います。

Google eブックスについて。
Googleブックスで出版社から提供されている本は、1ユーザーが1ヵ月に本の20%まで読むことができますが、Google eブックスで購入すれば、20%制限が外れるそうです。


佐藤さんは最後に、「今までの紙の本はアーカイブ資料として。新しいものはテクノロジーを活かした形で」とおっしゃっていました。併せて、「ユーザーの視点で何が便利か、が全て」ともおっしゃっていました。
この最後の一言こそ、Googleが魅力的なサービスを展開し続けているエッセンスかと思います。


○講演3 「書店からみた電子書籍流通の現状と課題」
牛口 順二氏(株式会社紀伊國屋書店 理事・営業推進本部長)

牛口さんは、(大学図書館が主に扱う専門書ではなく)一般向けの電子書籍、特に流通に焦点を当ててお話くださいました。

まず、紀伊國屋書店と電子書籍事業の経緯について、次いで、日本の電子書籍の現状についてお話くださいました。
日本で多いのは、ケータイ向けコンテンツ。コミック、ライトノベル、BL等。牛口さんは、「発達してきたのは、いわば別の市場だった」と指摘されました。電子書籍が広がりきらないのは、何と言ってもコンテンツ不足であるとも言われました。

牛口さんは、電子書籍でのみの販売は困難で、紙の本との併存を考えざるを得ない、とされました。
既存の水平分業モデルを、維持できるか?米国型垂直統合モデルとは違う、日本型モデルを構築できるのか?例えば印税も、従来の発行部数(実売数とは違う)による紙媒体モデルと、実売数による電子書籍モデルを、どうするのか?流通体制の未整備にどう対応するのか、といった課題を挙げられました。


最後に、ハイブリッドデジタル販売への取り組みについて、語られました。
書店が変容する中で、地域密着/セレクトショップなどの方向性を持たせた上で、新しい情報体験の場としての書店を提案していきたい、と総括なさいました。

また、こうした商用サービスと図書館サービスについて、どのような関係を築き、どう役割分担していくのか、という問題提起をされました。



○講演4 「国内学術出版社と連携した電子書籍への取り組み」
入江 伸氏(慶應義塾大学 メディアセンター本部)

最後の講演は、鋭い切り口と直球ホンネトークが持ち味の入江さんでした。

お話はまず、Googleライブラリープロジェクトの報告からでした。
慶應義塾大学は2007年から実施しており、Googleに著作権切れの約10万点を提供されたそうです。慶應サイドが担当したのは、デジタル化する資料の選定、著作権調査、メタデータ作成等で、Googleでは資料のスキャン・運搬などを行ったそうです。

大きな課題として挙げられたのは、画像の品質でした。
OCRの精度は、99%を超えているので、その修正よりも量を増やす方を重視されてきたそうです。校正コストをかけると、大規模スキャンはできず、キーテクノロジーであるOCRの精度向上は重要な課題だそうです。

国際化への課題として、URIの問題も挙げられました。
ISBNが付与される以前のものを、どうするか?個別データと現物を結び付けるキーが必要で、ISBN、OCLC、LCなどがないものにどう対処するか。日本でこれを本気で考えないと、使えないデータを大量に作るだけになりかねない、と指摘されました。

4月以降に公開する慶應OPACも、デモとして披露してくださいました。Googleブックスへのリンクボタンを設け、全文を読めるようにした点が特長です。
入江さんは、「OPACなんて、もう要らない。図書館は、メタデータから現物を早く取り出せればいい。電子であれば、その場で買えばいい」ともおっしゃって、私たちが持ちがちな固定観念とは違うビジョンを示してくださいました。


さらに指摘があったのは、これだけ電子ジャーナルが普及しても、貸出数は減らないのは何故か?、という点です。
答えはもちろん、貸出は和書が中心だから、です。和書を何とかしないと、という入江さんの思いは正鵠を射ていますし、今の電子書籍に対する危機感にも繋がっていると思います。

入江さんは、「新しい本はビジネスになっているので手を出せないし、50年以上経つようなものはNDLや青空文庫が対処してくれる。その間のものが、図書館が考えるエリアだ」と指摘されました。

併せて、国内の書籍市場1兆円のうち、大学図書館の和書購入は170億円。1%しかないものを、どうビジネスに?図書館が必要とする既刊書のビジネスは?・・・という問題提起をされました。
これについては、自分としての答えを持っていない部分でもあり、考えていきたいと思います。



○オープンディスカッション

後半は、湯浅先生をモデレータに、他の講演者をコメンテーターとして、フロアと一緒にディスカッションが行われました。
様々な話題が取り上げられ、とても面白かったのですが、簡単に要約することが難しく、この部分は割愛します。

一つだけ、記しておきましょう。
私がGoogleの佐藤さんに、「電子書籍が普及する中、図書館の持つアドバンテージは?」といった質問をしたところ、(すごくたくさんお話を頂いたのですが、メチャクチャ乱暴にはしょると)「場としての価値、今までにない新しい機能や役割に大いに期待」といった回答を頂きました。

ガンガンと書籍の電子化を進めているGoogleの佐藤さんが、場としての図書館を好きで大いに期待している、というのがとても印象的でした。(笑)
そしてこのお話は、先般より図書館業界でよく議論されている、場としての図書館の再定義に通じるものがあります。
期せずして、佐藤さんのご指摘が同じベクトルを持っていることに、後押しされた思いですし、さらにその検討を深めていかなければいけない、と思いました。


この日は豪華な講師陣で、とても勉強になりました。講師の皆さん、ありがとうございました。
また、この場を提供してくださった国立大学図書館協会の皆さま、とりわけ中心となってくださった名古屋大学の皆さま、ありがとうございました。



○お礼

このところ、少しずつ外にも出るようにしていたのですが、京都までの遠出は、娘・れいこの発症以来初めてのことでした。あれだけ勉強会などに通っていた京都も、ほとんど半年ぶり。(笑)

お会いした大勢の方々が、れいこ、そして私たち一家のことを、気遣ってくださいました。
会後には、講師・事務局の方々を含めてお会いした方々から何通もメールやツイートを頂き、本当に嬉しい限りです。
ちょうどこの日の朝、辛い検査結果が出ましたが、これだけ多くの応援を受けているのですから、きっとれいこは元気になってくれると思います!

皆さん、本当にありがとうございました!



<●どうでもいい独り言(最後も雑談)>

今回は久しぶりの京都遠征、勉強にもなりましたし、楽しかったです。
シンポジウムはもちろん、懇親会、二次会ともとても盛況で、大いに盛り上がりましたね。参加された皆さま、お疲れさまでした!

私もこれから、れいこの体調と相談しながらではありますが、ときどきこうした場に出て、勉強させてもらおうと思います。
れいことの闘病生活も、うまくオンオフを切り替えないと、自分が参ってしまいそうですからね!



最近、自分の健康管理にも留意しています。
今年の健康診断では、またまた血糖値がひっかかった他、心電図も2年連続でアウトでしたので・・・。結果が出て以来、間食もほぼ完全に止めて、汗をかく機会を増やしています。

最近、知人が大阪・神戸マラソンを走ったのに刺激され、ランニングも増やしています。3キロ程度を走るだけですが、1キロ5分ジャストくらい・・・空手家にしては、今一つですね。

しっかり健康管理して、れいことともに頑張りたいと思います。

それでは、押忍!

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