2010-08-13

日本出版学会「最近の図書館における電子化の動向 ―大学図書館の再定義とその編集機能」

 
1週間にも渡る、子どもたちの実家遠征。
帰ってくるやいなや、今度は4日間のキャンプに(しかも、親抜きで)。

悔しいのでお父ちゃんは、アイリッシュパブで一杯。
お約束どおり、フィッシュ&チップスと。


この飲み物は、英国王室御用達のバスペールエール。
さぞや・・・と思いきや、ギネスビールの方がいいなあ・・・。

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さて、8月6日(金)に、日本出版学会の関西部会が行われ、参加してきました。

「最近の図書館における電子化の動向 ―大学図書館の再定義とその編集機能」
(講師: 佛教大学図書館専門員 飯野 勝則氏)


この講演の主旨は、こちらをご覧ください。

会場は大入り満員で、何度も補助椅子を出す羽目に。最後は通路や、最後部を椅子でふさいでしまって、何とか対応できました。
当日は、日本出版学会の会員以外に、多くの図書館員や書店の方々がお越しくださって、このテーマに対する関心の深さを物語っているかのようでした。

以下に、印象に残った部分やポイントと思われる部分を、ご紹介します。

  1. 従来の図書館は、紙媒体の図書を提供することで、世界における「情報の集積地」だった。それがいまや、そうではなくなりつつある。フロリダ大学のように、資料購入費の7割超を電子コンテンツに費やしているところもある。

  2. 90万冊の図書を持つ図書館と、Web上の情報との情報量を、比較してみる。図書が、平均12万字とすると、図書館全体で216ギガバイト。それに対し、Web上の情報は、6877テラバイト(総務省情報通信政策研究所による2009年3月の推計)。単純計算しても、図書館の31,838倍の情報量となる。
    しかも、このWeb上の情報量はサーフェス・ウェブの推計であり、これとは別に、有償などでしか見られないディープ・ウェブに、その何倍もの情報があるとされている。

  3. インターネットが主流の情報世界で、図書館は生き残りを模索しなければならない。そのために、図書館の位置づけを再度捉え直す必要がある。

  4. 同じキーワードで、OPACとGoogleを検索したときのことを、比較してみる。
    OPACは、
    • シーケンス(表示順)上位のものが重要という訳ではなく、利用者がシーケンスの妥当性に気付く可能性も低い
    • OPACの最終画面はあくまでメタデータであり、利用者が求める情報そのものではない
    • 資料の現物を見て初めて、情報の取捨選択が可能になる

    これに対し、Googleでは、
    • シーケンス上位は確かに重要
    • 検索結果は情報そのもの
    • 情報の取捨選択に時間がかからない。

  5. このように、図書館とWebの間には、情報量においても、情報検索・提供技術においても、明確な上下関係が生じている。この新たな相関関係が、今後の図書館の立ち位置を考える上で、注目すべき点である。

  6. 図書館は、有史以来の巨大なアナログ・データベースであり、デジタルを融合したハイブリッド・データベースとも言える。図書館は、検索可能な範囲を広げる努力をするべきである。
    また、デジタル世界の「サーフェス」/「ディープ」の概念を図書館にも導入し、技術的にも思想的にも、Webとの一体化を進めるべきだ。

  7. 初期のWeb技術利用は、OPACの公開や電子図書館の画像コンテンツの公開などであった。今後は、検索エンジンへのデータ提供、図書館Webサイトの検索エンジン最適化など、積極的にWeb技術を活用していかなければならない。
    Webの(検索)技術は、IT企業すら自社開発を断念する高レベルなものであり、図書館が単独で技術開発できるものではなくなった。しかし、その技術をうまく取り入れることで、「準・先端」の位置を確保することが重要である。

  8. 主なWeb技術の活用例として、以下のようなものが挙げられる。
    • キーワードの視覚化
    • Library2.0
    • ディスカバリーサービス
       ディスカバリーサービスは、図書館所蔵の冊子から電子ジャーナル、データベースなどを横断検索できる、図書館専用検索エンジン。IT企業の検索技術を流用することで、自他館の利用動向を反映したシーケンスを作成することができる。これらは、ディープ・ウェブのコンテンツも検索でき、Googleにも検索できない情報を提供することができる。
    • オープンソースの購入

  9. 図書館の再定義とともに、職員の職責についても、再定義されるべきである。図書館をWebデータベースとして捉えれば、職員は「Webマスター」と再定義できる。
    Webマスターは、Webデータベースとしての図書館デジタルコンテンツを編集・提供する存在であり、情報提供の中心である図書館ポータルサイトの作成などに傾注すべき。

  10. 今後、図書館を活かすためには、デジタルコンテンツの情報「編集」が不可欠。
    玉石混交のデジタル世界においても、これを行うには、人というアナログ存在が必要。この姿勢を貫き、Google等との差別化を図ることで、図書館は「機能」として生き残る可能性がある。

  11. そのために、デジタルコンテンツのフィルターとして、検閲とならない範囲で、情報を選択・編集・提供する。図書館の存在意義を考えれば、少なくとも自由なネットサーフィンを提供することには、慎重になるべきだ。

  12. 図書館を活かすために、アナログコンテンツの潜在力を再認識したい。Web登場以前の情報のストックなどは、当然Web上には少ない。Googleが、なぜGoogle Book Searchを作ろうとしているのか、その理由を認識すべきだ。

  13. 最後に。
    • 図書館は、もはや情報世界の帝国ではない。新しい秩序に身を委ねるべき。
    • 図書館には積み重ねられた歴史と伝統が存在し、ここには資源としての価値がある。
    • 図書館に必要とされる人材も大きく変わってくる。図書館は、自ら変わる勇気を持たなければならない。坐して、情報世界の辺境になるべきではない。

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そして、質疑応答の時間です。
最初の質問で、上記11.について、詳しい説明が求められました。
それに対し、飯野さんからは、有害情報・成人向けサイトの排除といった例が挙げられました。選書を例に、デジタルコンテンツに対しても、提供するものを選別するべきだろうというお考えです。

私自身も、ここが一番伺いたい部分でした。
お話は伺いましたが、私自身は、飯野さんとは違う考えを持っています。私は、図書館が情報のフィルタリング等を行うべきではなく、むしろあらゆる情報へのアクセスを担保するべきと思います。
(選書は限られた予算の中、より適切な情報を選択するもので、情報のフィルタリングとは意味が異なると思います)

ですが、デジタルコンテンツにもある種質的な保証を与えよう、という飯野さんのご発想は、とてもユニークなものです。フロアからも、いろいろな意見が出され、活気のある議論が行われました。
質疑応答も、この質問を皮切りに多くの意見交換が行われ、最後は時間が足りなくなってしまいました。
<ちなみに、最後に挙手したのに、時間切れ宣告をされたのは、私です。(笑)

以上、この日のレポートでした。
(当日はもちろん、この後懇親会に行きました!)

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<●勉強会情報>

関西圏で開催される勉強会で、私が参加予定のものです。よかったら、ご一緒にどうでしょう?

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<●どうでもいい独り言>

多くの皆さんは、もう夏休み中でしょうね。
私も子ども達と3人で、実家の愛媛県松山市に帰省しています。やっぱり、実家はいいですね~。のんびりのんびり、毎日8時間くらい爆睡しています。
子ども達も、すっかりバカンス気分で、もう甘え放題な毎日です。

・・・とは言うものの、通っている大学院のレポートが、まだ3つも残っています。
今日はだいぶ進んだのですが、もうだいぶ焦りが・・・。(汗)

この夏は、空手の稽古にも励んでいるのですが、実家で数日、ほとんど稽古もできないまま。もうちょっと、気合を入れないといけませんね!

押忍!
 

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